店づくりについて|お金編
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店づくりの相談で、必ず話題になるのがお金のことです。
「この広さなら、いくらくらいかかりますか?」
当然、最初に気になるところだと思います。
ただ、店づくりに必要なお金は、内装工事費だけではありません。
物件を借りるための費用、設計費、厨房機器や什器、看板、備品、広告費。そして、オープンしてから売上が安定するまでの運転資金も必要です。
そのため、最初に考えるべきなのは「内装にいくらかけられるか」ではなく、店を始めて軌道に乗せるまでに使える総額です。
予算を全部、工事に使わない
せっかく店をつくるなら、できるだけ良い空間にしたい。
私たちも、つくる側としてその気持ちはよく分かります。
しかし、内装に予算を使い切ってしまい、オープン後の運転資金がほとんど残っていない状態は危険です。
店は完成した瞬間がゴールではありません。
オープンしてから認知され、常連のお客様が増え、売上が安定するまでには時間がかかります。その間も家賃、人件費、材料費などの支払いは続きます。
総予算の中には、工事費とは別に運転資金と予備費を残しておく必要があります。工事中に想定外の補修や設備変更が発生することもあるため、予備費は総事業費の10%程度を見ておくと安心です。
予算の大小より、お客様の体験価値
予算が多くても少なくても、私たちが大切にしていることがあります。
それは、その店を訪れるお客様の体験価値をきちんと担保することです。
安く開業できることは、事業を始めるうえで大きなメリットです。しかし、どれだけ工事費を抑えられても、お客様に「この店へ行く価値がある」と感じてもらえなければ、オープン後は厳しい戦いになります。
反対に、内装へ多額の費用をかけたからといって、体験価値の高い店になるとも限りません。
商品やサービスはもちろん、店へ入った瞬間の印象、居心地、照明、音、席の配置、スタッフとの距離感、注文から退店までの流れ。その一つひとつが、お客様の体験をつくっています。
限られた予算の中でも、その店らしさが伝わり、お客様の記憶に残る場所はつくれます。
大切なのは、単に工事費を安くすることではなく、使えるお金をどこへ配分すれば、お客様が感じる価値を最大化できるかを考えることです。
お金をかける場所と、抑える場所
良い店は、すべてに高価な材料を使った店ではありません。
お客様の目に触れる場所、手に触れる場所、店の印象を決める場所には、きちんとお金をかける。
一方で、見えない部分や既存のものを活用できる部分は、必要以上につくり替えない。
この判断が大切です。
例えば、入口、照明、カウンター、客席から見える壁などは、店の印象を大きく左右します。反対に、まだ使える設備や下地まで新品に交換しても、お客様が感じる価値にはつながらない場合があります。
ただし、給排水、電気、空調、換気、防水などは、見えないからといって削りすぎてはいけません。ここに問題があると、オープン後の営業そのものに影響します。
見た目に関する部分にはメリハリをつけ、営業に必要な性能は確実に押さえる。そのうえで、お客様の体験に直結する場所へ予算を振り分けることが、現実的なお金の使い方だと考えています。
安い見積もりが、安い店づくりとは限らない
複数の見積もりを比べるとき、総額だけを見るのは危険です。
見積もりに含まれている工事範囲、使用する材料、設備の仕様、別途工事の内容が違えば、同じ条件での比較にはなりません。
最初の金額は安くても、工事が始まってから追加費用が重なり、結果的に高くなることもあります。
大切なのは、一番安い会社を選ぶことではなく、何が含まれていて、何が含まれていないのかを確認することです。
そして、希望する店をつくるために必要な金額と、事業として無理のない金額の間を調整していく必要があります。
店づくりは、経営の一部
内装工事は大きな投資です。
だからこそ、単に格好いい空間をつくるだけではなく、その店が無理なく営業を続けられるかまで考えなければなりません。
予算が限られていることは、悪いことではありません。
限られた予算の中で、どこを残し、どこにお金をかけるか。その優先順位を整理することも、設計の役割です。
ただ安くつくるのでも、ただ豪華につくるのでもない。
事業として無理のない予算の中で、お客様が「この店へ来てよかった」「また来たい」と感じられる体験をつくること。
私たちは、それがお金をかけて店をつくる本当の意味だと考えています。